アンティークストーリー
Biscuit warmer / ビスケットウォーマー
アンティークファンに人気のアイテムのひとつにビスケットウォーマーがあります。
ビスケットウォーマーはビクトリア時代に作られシルバープレート製の持ち手と脚の付いた丸みを帯びたボックスの形をしています。上部の留め金を外してボックスを左右に開き、蓋のようになっている透かしになった仕切り板を立てるとストンと下に降りるようになっています。まれに3分割になるものや角型のものもあります。
ビスケットウォーマーはキッチンのオーブンで焼かれたビスケットをティーのテーブルに出すときに使われました。
バスケットやプレートに載せてお出しするよりも華やかで特別な演出になりました。
このビスケットウォーマーですがウォーマーという名前のためにいろいろな誤解があり、日本では開いたボックスに熱湯を注ぎ仕切り板の上にビスケットを置いて保温するものだと思われていたこともあったようです。
Sandwitch Tong / サンドイッチトング
日本ではコンビニでお弁当やおにぎりを売っていますがイギリスでは何といってもサンドイッチです。昔は中身とパンの種類(ホワイトかブラウン)を選んでその場で作ってもらうサンドイッチショップがたくさんありました。
今ではレディメードのサンドイッチのチェーン店とカフェが増えて昔ながらのサンドイッチショップは見かけなくなりました。サンドイッチは正方形のパンで作ったサンドイッチを斜めに半分に切った3角形のものが普通です。 いっぽうおもてなしに出される軽食としてのサンドイッチやティーの時に出されるサンドイッチはパンも薄めで小さめの長方形に切った耳なしのサンドイッチです。 なんでも直接手で取らないのがエレガントとされていますのでサンドイッチにも専用のトングがあります。サンドイッチトングはサンドイッチ専用の道具で他にはほとんど使い道がないとても贅沢な実用品です。
大きさ、形がサンドイッチトングにとても良く似たアスパラガストングというものがあります。見かけはほとんど同じですがアスパラガストングは片方のブレードの先端がほんの少し折れ曲がっていてアスパラガスが滑り落ちないようになっています。アスパラガストングをサンドイッチに使おうとするとパンとパンの間にブレードがスッと差し込めないので使えません。反対にサンドイッチトングでアスパラガスを取ろうとすると滑ってしまい使い物になりません。
Napkin Ring / ナプキンリング
テーブルコーディネートに花を添えるアイテムの一つがナプキンリングです。リネンのナプキンを丸めてリングに通してテーブルに置きます。アンティークのシルバーのナプキンリングはきれいな装飾のものが多くコレクションしている人もたくさんいます。
このナプキンリングには番号が刻まれているものが多いのですがこれにはいろいろな説があります。
『昔はナプキンは洗わずに何回も使ったので食事の後ナプキンを丸めてリングに通しナプキンリングの番号で誰のナプキンかが分かるようにした。』 とか
『リングに刻まれた番号で誰がどこに座るか分かるようにした。』 とか
『番号が付いているので無くなったときに誰のが無くなったか分かる』
などです。
シルバーのナプキンリングを使うようなお家がナプキンを何回も洗わずに使うというのも少しおかしな気がしますので違うのではないかと思いますがこの説は有力な説だそうです。
ナプキンリングには番号やイニシアルが刻まれているものが多くあります
Letter Opener / レターオープナー
お食事に招待した翌日には『ありがとう』のカードが届くイギリスではレターオープナーは毎日使う実用品です。
シルバーのレターオープナーにはアンティークのリサイクル品 ( ? ) をよく見かけます。
リサイクルといっても古い時代のカトラリーのブレードにハンドルを付けてレターオープナーとしたもので100年近く昔に作られたものです。
エナメルやべっ甲のハンドルのレターオープナーの多くがこうして作られていてブレードのエングレービングが途中で途切れたようなものがあるのもこのような理由です。
ブレードがビクトリア時代のシルバーでハンドルはエドワーディアンといった具合です。
もとはデザートカトラリーだったものをカットして作られたブレードの例
Watteau / ワトー
コンチネンタルの陶磁器や銀器に田園風景の中での男女の恋の駆け引きを描いた絵柄をよく見かけます。この18世紀のロマンスを題材としたものはワトーと呼ばれています。
17~18世紀のロココ様式を代表するフランスの画家 Antoine Watteauアントワーヌ・ヴァトー(ワトー)は自然の中での恋愛を題材とした絵を多く描き人気を博しました。
田園での宴や恋愛などの題材は大陸側のヨーロッパで人気のテーマでドレスデンやマイセンの絵柄となったり銀器の装飾に使われました。
マイセンは18世紀中ごろにワトーの描いた田園で恋する男女の銅版画を大量に購入し絵付けの参考にしました。同じように多くの工房がワトーのロココスタイルの絵やマイセンの作品を参考として陶磁器の絵付け、銀器の装飾を行ったためワトー柄はヨーロッパ中に広まりました。
ところがイギリスではワトー柄のものは作られておらず陶磁器ではマイセンやドレスデンのものがほとんどです。
銀器ではイギリスのホールマークのあるワトー柄装飾の銀器はコンチネンタルヨーロッパからの輸入品です。